· 

支援事例 働き方研究会

伊能 賢一

現状

 U社は、空調用ダクト製造・設置工事を行う製造業者である。千葉県、東京、茨城県南部を中心に堅実な経営を実践している。

 

 しかし、御多分にもれず人手不足に悩んでいるほか、設置工事にあたる社員の残業が常態化しており社員のライフワークバランスの点や会社の経費の点からも問題となっていました。

 そこで人材の採用・定着及び残業の削減の2点に絞ってご提案をおこなった。

 

 まず、経営数値から見た賃金動向等の調査を行った。具体的には、

①付加価値率、②労働分配率、③従業員一人当たり売上高、④従業員一人当たり付加価値額、⑤平均賃金=人件費(役員含む)/従業員数(役員含む)など人にかかる経営指標である。その結果、一人当たり売上高を示す一方付加価値はやや劣る結果になっていた。これは、大人数が必要な施工部門を外注に依存しているからであり、収益性は低くなるものの、選択と集中が図られており、事業構造上特に大きな問題はみられなかった。

 一方、人件費を見ると高い労働分配率と平均賃金となっており、同業他社と比較し、賃金面で優位性を持っていると言える一方、収益性を落とす要因ともなっていることがわかった。

 

対策

(1)人手不足への対応

 

 現在の年齢構成を見ますと20代から60代までバランスの取れた構成になっていた。したがって、当面はまずこの構成を維持することが重要です。

 また、若手の人材が入社してきていますので、この人材をやめさせずに能力開発を図っていくことが重要となっている。定着率の高い会社は求職者も多くなる傾向にあるためさおさらです。求職者には定着率の高さを訴求していくことを提案した

 また、一般的な採用対策を提案した。

 

①人材募集ルートの検討

  •  自社が現在活用しているルート、今後活用が可能なルートについて考察した。ルートは情報源と同義なので多様なルートを確保することが重要であることを説明した。

 

②ホームページの作り方

  •  求職者の多くはホームページを確認しますので求職者に対して訴求力の高いホームページを作成することが重要であることを説明したホームページによってより広い範囲の求職者に訴求することが可能になる。

 

③採用計画

  •  採用にあたっての事前準備です。準備不足は求職者に対して悪い印象を与えることを説明した。

 

④採用担当者

  •  入社数年の若手を採用担当者にすることで、今日考えやすくなることを説明した。

 

⑤会社説明会

  •  合同説明会に参加してもただ待っているだけでは、求職者は興味を持ってくれません。のぼりやお揃いの法被など目立つ方法を考えることを説明した。

 

⑥面接時の留意点を説明した

 

⑦内定者へのフォローの重要性を説明した。

 

(2)残業の削減

 

①提案書の提出を求める。                                                                              

 残業削減に対する意識が低い点が問題なので、意識付けを図るため残業削減に対する方策を本人から提案書として提出を求めることを説明した。

 

②削減された残業代の一部を手当てとして支払う。

 残業時間の減少は労働者にとっては、給与の削減につながるため嫌がる傾向があります。前年同期と比較して減少した残業代についてはその一部を手当てとして支払うことで残業削減へのインセンティブすることを提案した。

 

③作業日報の詳細化

 現在の作業日報の様式は時間単位での動静が把握できていないので、作業日報の様式を詳細化し動静把握に努めるよう提案した。

 

④残業の事前申請制度の導入

 現在の残業時間の申告は労働者の自由裁量・事後報告制度になっているので事前申請・承諾した時間のみとすることで残業時間の管理を行うことを提案した。